※こちらはAUTOMATON様によるインタビュー記事を転載させていただいたものとなります
サイバーエージェントゲーム・エンターテイメント事業部SGEコア技術本部が現在、開発者を募集中だ。
スマートフォン向けゲーム市場において、大きなシェアを誇るサイバーエージェントグループ。そもそも同グループにはQualiArtsやサムザップ、アプリボットなど多くのゲーム子会社が存在。さまざまなゲームを開発している。
大きなゲーム会社においては「縦割り」は一般的で、チームやセクションごとに独自に動くことは珍しくない。当然メリットがあるためそのような組織体系になっているわけだが、一方で、同じ会社にいながらも、チームや部署が異なることで別々で動き、技術共有はあまりされない……といったこともあるあるだ。いわゆるナレッジの共有は、大きな会社ほど直面する難しい問題といえる。
SGE(サイバーエージェントゲーム・エンターテイメント事業部)コア技術本部は、そうしたグループやセクションを技術的に“横断”する。時にA社のトラブルに入っていき問題を解決し、そのトラブルを吸収しB社の類似問題を解決する。そうした問題を全社に共有する……などなど。いわば横断型の技術者集団だ。
SGEコア技術本部は、一体なぜ”組織の横断“ができているのか、そして今現在どんな活動をしているのかについて、コアメンバーである石黒祐輔氏、矢野春樹氏、清原隆行氏らに話を伺った。今回はその歴史と、どんなかたちでグループを支えているのか、これまでリリースされたソフトフェアについて、まとめていく。なお、SGE(サイバーエージェントゲーム・エンターテイメント事業部)コア技術本部では以下のポジションを募集中だ。
・Unity基盤エンジニア(
該当リンク)
・Unityグラフィックスエンジニア(
該当リンク)
・Unityクライアントエンジニア(
該当リンク)
・Unityパフォーマンスチューニングエンジニア(
該当リンク)
そのほか情報はサイバーエージェントの
採用サイトへ
――皆さんの自己紹介をお願いします。
石黒祐輔(以下、石黒)氏:
SGEコア技術本部(以下、コアテク)で、開発責任者をしている石黒祐輔と申します。2014年にサイバーエージェントに入社後はQualiArtsで基盤開発をメインにおこなっておりました。そんな中、2021年にサイバーエージェントのゲーム事業部で開かれた、エンジニア組織をテーマとした
会議でコアテク立ち上げの提案をして、役員の方に決議していただきまして、それからずっと開発責任者という立場を続けています。現在はUnity開発で使うような基盤づくりをほかのメンバーと一緒にメインで作りつつ、コアテクが担っている全体的な業務も見ております。

石黒祐輔氏
矢野春樹(以下、矢野)氏:
2012年にサイバーエージェントに入社した矢野春樹と申します。私も最初はサイバーエージェントの子会社であるグレンジに、企画職として入社しました。2年半くらい企画をして、そこからエンジニアになって、Unityに触れるようになりました。

矢野春樹氏
その数年後、子会社のアプリボットに行き、『ブレイドエクスロード』というプロジェクトでリードエンジニアを担当した後に、横断系のことがやりたいと思い他社に一度転職しましたが、コアテクを立ち上げる話をもらって、面白そうだなと思い戻ってきました。
コアテクでは、最初はOSSの開発に積極的に取り組んで、いろいろなOSSを出したり、それを外向けに発信したり、そういう仕事をおこなっていました。現在は事業部全体で、大きいタイトルのほかにもグローバルでヒットするようなハイブリッドカジュアルのようなジャンルをたくさん作ろうという動きがありまして、短期間でたくさん作るためにも開発の効率化に取り組んでおります。
清原隆行(以下、清原)氏:
コアテクのグラフィックスチームでリーダーをしている清原隆行です。大阪のコンソール系のゲーム会社で13年ほど働いて、PS2の頃からPS4ぐらいのタイミングまでゲーム開発に携わっていました。ただ、家庭の事情で一度、地元の愛媛県にある実家に戻りまして、そこで専門学校の講師をしていた時期があります。

清原隆行氏
そのときに作った教材のテキストを書籍として出版させていただきまして、それが翔泳社様から出版されている「HLSLシェーダーの魔導書」という本なんですが、出版と同じくらいのタイミングで、サイバーエージェントのGraphics Academyという施策がありまして。つまり、グラフィックスエンジニアを求めているのかなと施策の裏を読んで、応募したのがきっかけとなって、コアテクで働くようになりました。
今はグラフィックスチームとして、おもにグラフィックス系のスタイライズなレンダリングシステムの基盤の開発や、各プロジェクトが抱えているグラフィックスのパフォーマンス的な問題、不具合の修正、あとはプロジェクト内で実現が難しい表現など、スポットで加わって実現できるような動きをしています。そこで得た知見をコアテクの方で吸い上げて、横断組織として横に展開していますね。
そもそも、サイバーエージェントのゲーム事業部はどういう構図なのか?
――まずは前知識として、サイバーエージェントのゲームグループにどういう会社があって、どういう構造になっているのか教えてください。
石黒氏:
サイバーエージェントのゲーム事業は複数の子会社が各社の強みを活かして開発をしています。6社の子会社が所属するゲーム・エンターテイメント事業部(以下、SGE)があり、SGEには、現在はQualiArts、アプリボット、サムザップ、Colorful Palette、グレンジ、GOODROIDが所属しています。
子会社それぞれに強みや事業の方向性があり、それぞれに特化したゲームを作っている中で、それを技術的に支える組織がコアテクです。子会社がゲーム開発をする上で効率的に開発するために技術的な部分を補うように一緒に仕事をしている、エンジニアの横断組織です。
――横断することもあると。子会社ではありつつも、他社でいうところの部署に近いようなものでしょうか。
石黒氏:
そうですね。子会社と言ってはいますがかなり壁は低くて、子会社間でも情報交流が活発に行われていて、気軽に話せる仲の良さもあるので、本当に部署に近いと思います。
「グループ内で似たような物が作られる」というジレンマ
――コアテクが生まれるまでには、どういった課題があったのでしょうか。
石黒氏:
まず一番大きい部分として、昔は今ほど情報交流が活発ではなく、互いの間にある壁が高い時代がありました。例えばある会社で作ったものに良いものがあったとしても、ほかの会社で使われないとか、そもそも何を作っているのかさえ知らないという、子会社ごとで埋もれてしまう技術資産が存在していました。ゲーム開発に必要なアセット基盤を開発していても、同じようなものがほかの子会社でも必要になったらそれぞれで作っていて。もったいないですよね。それがSGEの抱えていた課題であり、コアテクの一番解決したかった課題ですね。
――その課題によって、当時はどういった弊害が生まれていたんでしょうか。
石黒氏:
グループとして見ると、作らなくてもいいものを作る二度手間が発生する、非効率な状態になっていました。グループ内の他社がすでに作っているような基盤を、情報を共有されていないがゆえに、工数をかけて作ってしまう。ゲームを作るのに同じような基盤ばかりを作っていても仕方がなくて、一番の本質はやっぱり良いゲームを作ることです。
たとえばルックだったり、インゲームの仕掛けだったり、そういったゲームに直結するところにもう少し時間を使ってほしかったので。そこで、どんなゲームにも共通する基盤的なところは、コアテクが全体的に担当すれば事業的にもゲーム開発の効率的にもいいよねとなり、当部署が誕生しました。
――同じようなものを作っていたというと、どういったものがあったんでしょうか。
石黒氏:
いくつかありますが、SGEでよく事例に挙げられていたのはアセット基盤ですね。元々、グループ内の会社によってUnity開発歴が長い会社と短い会社があって。Unity開発歴が長い会社は、アセットバンドルというUnityのアセットをうまく管理して開発ができていました。逆にUnity開発歴が浅いところだと、その扱いに苦労したり、Unity独自のノウハウが必要な部分でトラブルを踏んだりとか、そういったことがありました。
そこを全体的に基盤化して整えるというところが、コアテクの役割のひとつですね。アセット基盤にも世代はありますが、すべての世代を合わせてSGEの全体的なタイトルに導入したことで、工数やノウハウの集約といった部分が効率化されていきました。
矢野氏:
そもそも、コアテクができる前は、具体的にこれが困っていたとか、これがいろいろなところで作られたということすらわからない状態だったんです。SGEが子会社制を採用しているのは、子会社同士が切磋琢磨して、互いに良いものを作ろうという姿勢になれるというのが大きな理由で、それによって事業を伸ばすという狙いがありました。
ただその結果として、他の子会社に技術資産を共有せず、閉じがちになってしまうという傾向がありました。そんな状況だったので、実際に当時アプリボットにいた私はQualiArtsが何をやっているのか、何を作っているのかもよく知らなかったんですよ。なので正確に言うと、いろいろなナレッジやいろいろなライブラリが各社で作られていたけど、何が被っていたのかもよくわからなかったレベルだったように思います。
――その当時、アプリボットからQualiArtsはどう見えていましたか。
矢野氏:
QualiArtsは技術資産を積み上げる意識が当時から強いイメージでしたね。当時は詳細は知りませんでしたが、アセット基盤やADVパートを効率的に作るためのフレームワークみたいなものも作っていたんですよ。すごい技術にこだわっているし、積み上げている会社というイメージでした。
――石黒さんは当時QualiArtsにいましたが、何となく他の子会社に技術を渡したくない気持ちはあったんですか。
石黒氏:
個人的には積極的にオープンにしたい派だったんですが……矢野の言ったとおりオープンにすることのメリットがなかったんですよね。むしろ、オープンにすると不具合が出たときのサポートとか要望が出たときとか、コミュニケーションに時間がかかってしまうので。時間を取られる一方で、ほかでいくら広まって成果が出たとしても、QualiArts内での評価対象になり辛いので、そこですれ違いになって、あまりオープンにすることに前向きになれないもどかしさがありましたね・・・
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